顧問弁護士を依頼すると取締役会等への出席してもらえますか?
Q 顧問弁護士を依頼した場合、取締役会や経営会議への出席は可能ですか?
A
(1)会社更生事件
最近、顧問契約をしていただいているご依頼者から、取締役会や経営会議に出席して、適宜コメントしてほしいとのご依頼をいただくようになりました。ありがたくお引き受けし、会議に出席させていただいております。
当事務所は会社更生事件への関与が多い事務所ですが、会社更生事件では会社の資金繰りの心配から更生会社の経営に関する重要事項の決定まですべて私ども弁護士がやります。
特に申立直後は会社内外とも混乱しますが、混乱を収めつつ経営にあたるので誠に大変です(そしてとてもやりがいがあります。)。また、部長レベルの経営会議に出席したり、特別の案件についての会議を主宰したりすることは通常行っています。さらに、終業後に社内で缶ビールを飲みながら従業員の方と談笑することにより現場の声を伺うこともよくあります。
そうした経験をしておりますので弁護士の中では、経営者の立場から発言することができる部類と自負しております。
(2)弁護士に対し適時に相談することは難しい?
取締役会や経営会議に弁護士が出席することはコンプライアンス上望ましいことは言うまでもありませんが、最大のメリットは弁護士から適切なタイミングでアドバイスを受けられる可能性が高まるという点かと存じます。 日常の相談の中で「もう少し早くご相談いただければ」という事態は、残念ながら少なくありません。しかし、弁護士に対し適時に相談することは実は難しいのでそうした事態はやむを得ないことなのです。すなわち、時機を逸することなく相談するためには法的問題点に対する鋭敏な感覚が必要ですが、こうした感覚は法的紛争処理の経験や法律判例の知識の集積によって培われるものです。
そもそもそうした経験や知識がないからこそ弁護士に相談するのですから、弁護士に適時に相談することは構造的に難しいことになります よって、上述した構造的な困難を解決するには、顧問弁護士に対し会社の業務全般について定期的に説明し、そのチェックを受けることが得策です。
そしてそのために最も効率的なのは取締役会ないし経営会議に弁護士を同席させ、弁護士から適宜法的問題の指摘を受けることです。
取締役会や経営会議に出席させていただいている場合、会議の中で例えば新規受注についての報告がなされれば、信用調査の必要性、方法についてアドバイスをすることができます。また、人事労務問題についても報告ないし協議事項として挙げられることがございますが、そうした場合の対応についてもご助言が可能です(もとより会議を円滑に進めるために問題点の指摘及び助言は別途とすることも可能です。)。
さらに、弁護士の議論を聞くことで役員の法的感覚を高める効果も期待できます。加えて、案件によっては相談すること自体躊躇される場合もあるでしょう。そうした場合でも弁護士が社内に来ているのですから、会議後少し相談してみようと決心(?)されることもままあるようです。
(3)オーナー社長が経営判断に迷われたとき
オーナー会社の場合には取締役会や経営会議は開かれないのがむしろ通常かもしれません。その場合には月次経営概況メモ(営業、財務、製造、購買、人事等の項目について)、月次試算表(BS、PL)をお示しいただき、顧問弁護士にコメントを求めることも有効です。顧問弁護士に見せるためにわざわざ作成していただく必要はもとよりありません。オーナー社長の手控えを拝見させていただければ十分です。第三者たる弁護士に説明することで法的な側面からのチェックがなされるとともに経営者の経営判断の的確性が担保されます。オーナー経営者は孤独なことが多いので経営判断に迷われた場合にもお役に立てるものと存じます。