先日付振込と債権仮差押
【論点】
第三債務者である勤務先Aが、仮差押命令の送達を受けた時点で、仮差押えの対象となった退職金債権の弁済のために取引銀行Bに対し先日付振込みの依頼をしていた場合において,上記送達後にされた振込みによる弁済を仮差押債権者に対抗することはできるか?
【事案のポイント】
平成13年12月26日 A、債務者の退職金1138万0800円をB銀行のオンラインシステムで送金手続
平成13年12月27日午前11時ころ 債権仮差押命令、Aに送達。なお、同日Aの最終営業日であり、修 行予定時刻は午後0時15分
平成13年12月31日 債務者退職。
【判例】(最高裁平成18年7月20日、判例タイムズ1222号86頁)
判例は、民法481条1項の解釈として、「取引銀行に対して先日付振込みの依頼をした後にその振込みに係る債権について仮差押命令の送達を受けた第三債務者は,振込依頼を撤回して債務者の預金口座に振込入金されるのを止めることができる限り,弁済をするかどうかについての決定権を依然として有するというべきであり,取引銀行に対して先日付振込みを依頼したというだけでは,仮差押命令の弁済禁止の効力を免れることはできない。」として、弁済の効力を認めた原判決を破棄することとした。 なお、具体的事情の下において、第三債務者である勤務先Aが本件仮差押命令の送達を受けた時点で人的又は時間的余裕がなく振込依頼を撤回することが著しく困難であるなどの特段の事情があったかどうか等について更に審理を尽くさせるため本件は原審に差し戻された。
【参照条文】
民法 第481条
1 支払の差止めを受けた第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者に請求することができる。